「米国の利下げが始まるらしい。今のうちにTMF(長期米国債3倍ETF)を仕込めば一気に資産倍増かも?」——そんな甘い期待を抱く前に、金利と債券価格の力学を正しく理解しておきましょう。本記事では、金利が1%(100bp)低下した場合に、理論上TMFの価格がどこまで跳ね上がるのかをシンプルな計算で可視化します。
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【おさらい】金利と債券価格はシーソーの関係
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・長期金利が下がる(債券利回り↓)→ 既発債の価格は上昇(需要↑)
・逆に金利が上がると価格は下がる——この「シーソー関係」が債券投資の根本原理。
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TMFの価格上昇を左右する「デュレーション」とは?
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金利感応度を測る代表指標がデュレーション。おおまかな目安として、
価格変化率(%) ≒ ーデュレーション × 金利変化幅(%)
TMFの原資産である「米国20年超国債指数」のマコーレーデュレーションは約17年※と言われます。
※実際の値は利回り水準・残存期間で変動。ここでは17で近似。
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【簡易計算】金利低下でTMFの理論価格はどこまで上がる?
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- TLT(1倍ETF)の理論上昇幅
- 金利1%低下 → 価格上昇率 ≒ デュレーション17 × 1% = 17%
- TMF(3倍ETF)の理論上昇幅
- 日次ベースで3倍を目指すため単純倍率ではないが、短期的に一方向へ動くと仮定すると
- 17% × 3 = 51%
すなわち、金利が1%下がれば、理論的にはTMFは+50%超の値上がりポテンシャルを秘めます。ただし以下の注意点を忘れてはいけません。
● 実際の市場では金利低下が一日に集中するわけではなく、“日次リバランス”によりドラッグが発生→理論値より低く着地するケースが多い。
● 経費率(1.05%/年)やスプレッド、為替影響でリターンはさらに目減り。
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利下げを予測するための重要経済指標
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- FOMC声明・ドットチャート
政策金利見通しを示すドットが下方にシフトすると債券買いが加速。 - CPI(米消費者物価指数)
インフレ鈍化=利下げ余地拡大。コアCPIが市場予想を下回ると長期金利は急低下しやすい。 - 雇用統計(NFP/失業率)
雇用の軟化は景気減速→利下げ思惑を高める。
これら指標が“市場予想を下回る”方向にブレるたびに長期金利はスパイク的に下がり、TMFが急騰するシナリオが描けます。
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実践Tips:イベントドリブンで狙うなら?
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・FOMC週はボラ拡大—発表当日に飛び乗るより、前週からポジションを小口で仕込み、結果で半分利確・半分トレーリングストップが鉄則。
・CPI発表日は板が薄い—成行注文はスリッページ要注意。指値またはOCOを活用。
・ドル円ヘッジ—円建て評価額は為替で相殺される場合あり。為替リスク許容度に応じてヘッジを検討。
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まとめ:金利とデュレーションを制する者がTMFを制す
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・金利▲1%でTLT+17%、TMF理論+51%
・ただしドラッグと経費で実際の上昇幅は理論より必ず小さい
・利下げ局面を読むにはFOMC/CPI/雇用統計をウォッチ
・イベント前後はボラ大→資金管理と損切りルールが生命線
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